ポスター発表
P-R-25
視覚障害児用白杖の開発および実証的検討
○吉岡学(1)、清水順市(2)
(1)金沢大学、(2)東京工科大学
【目的】
本研究は、視覚障害児が初めて白杖操作訓練を行う際、操作しやすく、身体的に負荷がかからない専用白杖の開発及び実証的検討を目的としている。
【方法】
本研究の対象者は、8歳から12歳の視覚障害以外の疾患を持たない女児7名とした。全ての女児は週1時間の歩行訓練を1年行った。本研究の実施にあたり、対象者及びその保護者には研究の内容を口頭で説明し、同意を得た。本研究に使用した白杖は新しく開発した白杖と従来の白杖の2種類とした。開発した白杖は、長さ調整が可能であり、重心位置は全長の先端部から34%の部分に位置する軽い白杖(180g)である。一方、対照杖である従来の白杖は、長さが調整できず、重心位置は全長の先端部から38%の部分に位置する重い白杖(245g)である。また、長さはいずれの白杖も女児らが学校にて使用している80cmのもとした。石突は、新規開発した交換式のものであり、パームチップとローラチップの2つの機能を有しているものと一般的なペンシル型を用いた。
本実験では、視覚障害児が各白杖で10mの歩行通路をスライド法により単独歩行を行い、その時の上肢筋活動、手首関節角度、歩行速度の測定より2種類の白杖による重さの身体的負荷について評価した。
【結果】
各白杖操作における上肢筋活動電位(尺側手根屈筋、尺側手根伸筋、腕橈骨筋、上腕二頭筋)を測定した。結果、従来の白杖による操作より新しく開発した白杖による操作の方が各対象部位にて筋電位が低い値を示した。手首関節角度では、重量が重い白杖が軽い白杖よりも角度が小さかった。歩行速度においては、重量が重い白杖のほうが大きいことが明らかになった。
【考察】
新しく開発した白杖は、従来の製品より軽量であった。また、石突はパームチップとローラチップの2つの機能を有しており、路面による摩擦抵抗が少なく、操作性に優れていた。それら2つの要因により、白杖のスライド法操作によって使用される上肢筋活動(尺側手根屈筋、尺側手根伸筋、腕橈骨筋、上腕二頭筋)負荷が軽減されたものと思われる。また、石突がローラチップ型の性能を有しているため、安定した手首によるスライド操作が可能になったものと思われる。
【結論】
新しく開発した白杖では、従来の白杖より上肢の筋負荷は43%減少しており、視覚障害児にとってスライド操作しやすくなっていた。つまり、スライド操作といった白杖歩行訓練において正確な動作を学習することが可能であり、障害児専用白杖として適した自助具であるといえる。
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