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ポスター活動
P-A-36
盲ろう者を対象としたクライミングプログラム開発

○木本多美子(1)、小林幸一郎(1)、前田晃秀(2)、小平純子(2)、佐藤彩奈(2)
(1)NPO法人モンキーマジック、(2)東京都盲ろう者支援センター

【はじめに】
NPO法人モンキーマジックは、クライミングを通じて視覚障害者を始めとした障害者の可能性を広げることを目的に活動している。これまでの調査研究においては、クライミングが視覚障害者にとって「ロープやマットを利用して、安全に行える運動の機会であること」「転倒防止の効果」のような身体的な効果の他に「自己効力感」「信頼感」「健康的な生活への意識と行動の変容」等の精神的、社会的な効果が示唆されている。
本報告では、視覚障害と聴覚障害を重複している「盲ろう者」を対象にして、安全で価値のあるクライミングプログラムの開発を目指して行われた活動の報告を行う。

【活動概要】
東京都盲ろう者支援センターより呼びかけをし、参加者(盲ろう者)5名を募集し、1回を3時間で5回行った。その意図は、数回行うことで、クライミングの知識をつけ、成長を体感してもらうためである。参加者は86歳の男性を始め平均年齢65歳であった。クライミングはロープによって安全確保を行うトップロープクライミングで、高さ約8mの壁にて行った。特に工夫した点は、一旦、登り始めるとクライマーは下からの指示が伝わらない。そこでクライマーの腰に軽い紐をつなぎ、紐を引っ張る回数で「ストップしてください」「ゴールですよ」「降りてきてください」という合図を下から送れるようにした。上からの必要な指示「ロープを張ってください」「降ろしてください」等は、ジェスチャーを決めて伝えてもらった。

【結果・参加者の反応】
・「やれるか不安だったけど登れて嬉しかった」「達成感がある」「人生より大変だった(笑顔で)」「次回があればまたやりたい」等のポジティブな感想があった。
・登り始めると下からの声が聞こえなくなることを不安がっていたAさんが、後半には自ら補聴器を外して登っており「外した方が集中できる」と安心して集中している様子があった。
・「家族と一緒に続けたい」というBさん。別途家族へのプライベートレッスンを開始した。

【まとめ】
盲ろう者は身体を動かす機会が不足しがちになることから、安全に楽しくスポーツに打ち込める機会として、クライミングの価値は高いと感じられた。しかし、今回は助成金を活用してのプロジェクトであったので、今後の継続や普及の方法が課題であり、客観的な価値を証明する調査研究が必要である。

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