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ポスター発表
P-R-20
字づまり文字認知訓練が読書に及ぼす効果

○新山由衣、川嶋英嗣
愛知淑徳大学健康医療科学部視覚科学専攻

【目的】
ロービジョン者の読書能力を向上させるために読書視力値の文字サイズを用いた訓練法が英語の読書研究で提案されている。この訓練法はサイズ閾の文字で再学習させて閾付近の読書能力を向上させることにねらいがある。日本語の読書に適用するための基礎的研究として、藤井・川嶋(2015)は視覚正常者を対象に字ひとつの平仮名文字を用いた文字認知訓練を行ったが、訓練前後で読書視力値の向上は認められなかった。これは読材料では読み取る文字の両側に別の文字が配置された字づまり状態であることが関係していると考えた。本研究では、読書視力値の文字サイズによる字づまり文字認知訓練が読書に及ぼす効果について検討した。

【方法】
矯正視力1.0以上で、母国語を日本語とする10名(平均年齢21歳)を対象として実験群と統制群に5名ずつ分けた。自作のMNREAD-Jkと訓練視標はPsychopyで作成し、MacBookProRetina上に呈示した。訓練では、清音と濁音の平仮名計66文字を用いて3文字で構成した無意味語単語を訓練刺激として真ん中の文字を読ませた。訓練群は、1日66×15試行の4日間で計3960文字の訓練を行った。訓練効果は、MNREAD-Jkによる読書視力、臨界文字サイズ、最大読書速度の読書成績を訓練前後で比較した。統制群は訓練を行わず、読書成績の比較を1週間の間隔をおいて行った。

【結果】
訓練群の訓練中における誤答数の変化は、一元配置反復測定分散分析の結果、訓練日数を重ねるにつれて有意に減少した。対応のあるt検定の結果、訓練群では読書視力のみ有意に向上したが、統制群では読書成績の全てについて有意な変化が認められなかった。

【考察】
本研究で実施した訓練を用いることで字づまり文字の読み取りは向上できることが示された。訓練によって読書視力値の向上が認められたことは、文字サイズ閾付近の読書には字づまりの影響があり、訓練によって向上できることを示唆している。

【結論】
読書視力値の文字サイズを用いた字づまり文字認知訓練は読書視力向上に有効である。

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