ポスター発表
P-R-23
MNREAD-Jを活用したロービジョン者向けディスプレイコントラスト比の評価
○清家順(1)、飯塚潤一(2)
(1)有限会社ユニバーサルワークス・筑波技術大学、(2)筑波技術大学
【目的】
JISX8341-3(高齢者・障害者等配慮設計指針-第3部:ウェブコンテンツ)及びその関連国際規格ISO/IEC40500では、ロービジョン者向けにウェブコンテンツが最低限確保すべきコントラスト比を4.5:1と定めている。この数値は、ISO9241-3で定めた3:1に、視力低下に伴う感度損失1.5を加味したものである。本研究ではコントラスト比を変え、ロービジョン者に見やすい値を検証する。
【方法】
JISZ8513-2006は晴眼者を想定しているため、MNREAD-Jを用いて、ロービジョン者9名の臨界文字サイズを算定し、評価用文字サイズを決定した。次に、コントラスト比を変えた画面に表示した無意味文から、指定文字を見つけきるまでの時間を測定した。その後「画面の明るさ」「文字の読みやすさ」について主観評価を行った。これらを晴眼者10名のデータと比較した。
【結果及び考察】
ロービジョン者は晴眼者と同じく、コントラスト比が低下するに従って、検索により多くの時間を要した。しかし、いずれの区間においても検索時間の明らかな変化は見られず、JISで示されていた数値基準4.5:1周辺、3:1周辺でも、特徴的な変化は認められなかった。
ロービジョン者は、コントラスト比の低下に伴う検索時間の増加割合が、晴眼者の3倍にのぼった。コントラストが低いと、ロービジョン者は、文字が急激に識別しにくくなり、すなわち、情報の取得に際してより多くの時間を要すると言える。
最も高いコントラスト比6.6:1においても、ロービジョン者は、晴眼者の1.9倍の検索時間を要した。
【結論】
JIS/ISOの規定では測定できなかったロービジョン者に対してMNREAD-Jによる臨界文字サイズを適用することにより、ディスプレイの見やすいコントラスト比を評価することができた。ロービジョン者にとって、高いコントラスト比を確保することは晴眼者に比べて非常に重要である。各自の見やすさのばらつきを考慮すると、ロービジョン者へのアクセシビリティを確保するには、JIS規定値4.5:1よりも更に高い値が必要である。
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