ポスター発表
P-R-34
広範囲聴覚空間認知訓練システムWR-AOTSにおける歩行検出方法の改良について
○関喜一(1)、岩谷幸雄(2)、大内誠(3)、鈴木陽一(4)
(1)産業技術総合研究所、(2)東北学院大学、(3)東北福祉大学、(4)東北大学
【目的】
視覚障害者にとって、音により周囲の状況を認知する聴覚空間認知能力を獲得することは不可欠である。筆者らは、2013年4月に広範囲聴覚空間認知訓練システムWR-AOTSを実用化し、その後も継続的にアップデートを提供している。WR-AOTSは訓練生が実際に歩きながら音を聴取して訓練を行うシステムであるが、加速度センサの誤差により、従来は歩行検出が不安定であった。今回は、歩行検出方法を大幅に見直して改良し、2015年8月にVer.2.09として公開したので報告する。
【方法】
従来版であるVer.2.08以前では、訓練生の歩行検出のために、歩行開始・停止時に発生する大きな前・後方向の加速度を使用していた。しかし、加速度センサの誤差により、誤判断が発生する場合があった。
Ver.2.09では、前後方向ではなく、歩行時に発生する上下方向の加速度の絶対値を判定に使用する方法を採用した。
【結果】
この改良により次の3つの改善が実現した。
(1)高いSN比の計測が可能
(2)頭部の水平回転によるノイズが発生しない
(3)誤判定が持続しない
実際に被験者実験を行った結果、誤判定が全くなく、10m程度の歩行距離ではほとんど誤差なく歩行距離を計測できることを確認した。
【考察】
今回の改善は、前後ではなく上下の加速度で歩行検出を行うという発想の転換から実現した改善である。今後更に加速度データの処理方法を見直すことによって、更に精度のよい歩行検出が可能になると考える。
【結論】
今回は、従来不安定だった歩行検出方法について改良を行い、Ver.2.09として2015年8月にリリースした。既に約80件の視覚障害関係施設に配布済みである。
※詳細は以下のWebサイト参照
http://sta.aist.go.jp/yoshikazu-seki/AOTS/WR-AOTS/index-j.html
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