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ポスター発表
P-R-33
視覚障害児者の2本白杖歩行に関する実践的研究

○松井繁
金沢星稜大学人間科学部

【目的】
視覚障害者の独歩の主流である現今の白杖歩行の問題点を踏まえて、安全でスムーズ、スマートな歩行技術の向上を図る。

【方法】
基準に適合する長さの杖を用い、タッチテクニックまたはスライド法で歩行することが基本、前提である。白杖を2本同時に持って歩行する。両手でそれぞれ1本ずつ杖を持ち、そのうちの1本を通常「身体の防御」に使用する。例えば、左手で持った杖で、踏み出そうとする足の前の安全を確認する。右手で持った杖は、体の前で右上方から左下方へ斜めに保持する。また、危険な場所などでは、臨機応変に右手をも使って2本の杖で必要な「情報」を収集する。

【結果】
本方式では、白杖で体前面を防御するため、例えトラックや細い鉄柱などの障害物があっても、ただ杖が当るだけで、身体を直接それらにぶつける事故は起きない。また、プラットホームなどでは、身体両前外側の情報を広く得ることができるので、転落事故を防ぐことができる。

【考察】
一般人は両目で見つつ歩いており、視覚障害者にとってその視覚の代行が杖(手の触覚)である。触覚(情報の1.5%)は、視覚(83.0%)より劣位にある。1本杖歩行では、杖をどれほど巧みに操作しても、トラックや細い鉄柱などとの衝突事故は避けられない。プラットホームからの転落事故も後を絶たない。健常者が両目を使っているように、用いる白杖を1本ではなく2本にしてフルに活用すれば、合理的に歩行技術を向上させることができる。さらに、視覚障害者のシンボル的影響も大きくなる。

【結論】
視覚障害者の2本白杖歩行では、以下の結論が得られた。
(1)衝突事故を防ぐことができるので、安全性が向上する。
(2)2本の杖を触覚器として用いる時、1本に比してより多くの情報が得られる。
(3)衝突や転落に対する恐怖が軽減するから、安心感・ゆとりが得られ、歩行時の姿勢が良くなる。

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