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ポスター発表
P-R-39
ロービジョンの歩行困難と視機能についての文献調査

○麻野井千尋(1)、小田浩一(2)
(1)東京ライトハウス、(2)東京女子大学

【目的】
中途視覚障害の人は移動と読み書きに最も困難を感じている。読み書きに比べ移動の訓練開始の客観的な判断は難しく、訓練の導入が遅れる現状がある。歩行困難と関連する視機能が分かれば医療機関から訓練施設への早期照会が可能となる。本研究では視機能のどのような障害が歩行困難と関連するかを文献調査により明らかにする。

【方法】
ロービジョンの人の歩行困難に関する21本の文献(1982~2013年)から、視力、視野、コントラスト感度、視野の中心部の暗点の大きさが、歩行困難(歩行速度の障害物への衝突)とどの程度関連するかを調査した。また歩行困難をもたらす視機能が厚生労働省が定める障害程度等級のどれに該当するか検討した。

【結果】
歩行速度と障害物への衝突回数と関連が深い視機能は、視野とコントラスト感度であり、視力との関連は低かった。残存視野は歩行速度と、コントラスト感度は衝突回数と関連した。視野が半径57°を下回ると歩行速度が落ち、衝突回数が増大し、15°を下回ると顕著になった。中心37°以内は特に重要で、この領域の左右と下部に暗点があると衝突のリスクが高まった。この半径57°を厚生労働省の視能率に換算すると74.3%になり、障害程度等級基準には該当しなかった。

【考察】
身体障害者手帳に該当しないロービジョンであっても、歩行速度が低下し障害物へ衝突する危険性が示唆された。このため身体障害者手帳の有無に基づき訓練の開始を決定すると、これら身体障害者手帳に該当しないロービョンの人の訓練が遅れる可能性がある。

【結論】
視野狭窄や中心部付近の暗点、コントラスト感度の低下は、障害程度等級基準に該当しないロービジョンの人においても歩行困難の原因となる。このようなロービジョンの人の歩行訓練では、盲の人を対象とした訓練とは質的に異なる方法が必要であると考えられる。残存視機能を活用できる訓練の導入が望まれる。

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