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ポスター発表
P-R-18
老視に配慮した置き型拡大鏡の選定方法

○小林章
国立障害者リハビリテーションセンター学院

【目的】
調節力の衰えた老視眼の状態に合わせ、眼精疲労の生じにくい置き型拡大鏡の選定方法を検討する。

【方法】
以下の手順で、調節力0.84D(検査時照度300lx)の著者自身をモデルとして研究を行った。
(1)任意の置き型拡大鏡を選び、無限遠に焦点を合わせた単眼鏡(ナイツ社製PK-6)と眼鏡用テストレンズを用いて、Dickinson(1998)の方法により拡大鏡ごとに虚像の位置を求めた。(2)完全矯正をした眼鏡と、(1)の結果により虚像に遠点を結ぶ加入をした眼鏡を用意し、印刷された活字をそれぞれの眼鏡と拡大鏡を使用して観察した。

【結果】
完全矯正の眼鏡を使用しても虚像は鮮明に見える気がしたが、数分も経過すると目に疲労感が生じた。加入した眼鏡を使用した場合は鮮明に虚像が見え、かつ疲労が生じなかった。

【考察】
理論的には調節力不足のため虚像にはピントが合っていない状態だが、拡大された虚像は「よく見える」という感覚を生じさせつつ、調節機能には大きな負荷がかかるために疲労が生じると思われた。虚像距離に合わせた加入をした場合、加入度の焦点距離よりも目を遠ざけると虚像がぼやけることから、Dickinson(1998)の方法はテストレンズの0.25Dステップでの測定にはなるが、虚像までの距離をほぼ正確に測れることが確認できた。

【結論】
調節力が衰えた老視の者に置き型拡大鏡を選定する場合、拡大鏡の虚像距離を確認し、使用する時の目とレンズの距離を考慮したうえで老眼鏡の度数を決定する必要がある。また、その際の倍率は拡大鏡の屈折力、老眼鏡の屈折力、2枚のレンズの距離によって変化する等価屈折力を考慮したうえで拡大鏡を選定する必要がある。

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