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ポスター発表
P-R-47
カラー版触図による複雑なイラスト教材の試作
―解剖学循環器系教材への適用―

○市川あゆみ(1)、加藤一夫(1)、安田輝男(1)、安田孝子(2)、飯塚潤一(1)
(1)筑波技術大学、(2)触覚伝達デザイン研究会

【目的】
我々はこれまで、触図をカラー化することにより、弱視者と全盲者双方にとって内容が理解しやすく、わかりやすくなることを明らかにしてきた。この知見を活かし、カラー版触図として詳細な表現が必要となる、解剖学の教材を試作した。

【方法】
図は、循環器系のものを選択した。講義担当者と相談の上、ドロー系ソフトウェアを使用し、解剖学の専門書を元に輪郭線を描画した。次に、学習において重要な部位に着色/網かけを施した。本学で解剖学を受講する視覚障害学生の多様な見え方に対応するため、図のレイアウトを変えずに、(1)カラー印刷・墨字(軽度弱視者用)、(2)カラー版触図・点字(重度弱視者用)、(3)モノクロ版触図・点字(全盲者用)の3種類を作成した。

【結果】
軽度弱視者は色、重度弱視者は色と凹凸、全盲者は凹凸で、血管内の血液の性質を理解できるようにするため、上述の(1)(2)は、動脈血が流れる血管にはオレンジ、静脈血が流れる血管にはブルーを配色した。配色は色覚異常に配慮し、赤よりも視認性の良いオレンジを使用した。
(3)は、オレンジの代わりにドットの網をかけ、ブルーに代わり内腔全体が盛り上がるようにした。

【考察】
ドロー系ソフトウェアの階層機能を使用することで、同じ線図を墨字版・点字版で共用し効率的に教材作成をすることができた。本試作に用いた詳細な図を触図化すると、面積の狭い部分が多くなる。それを改善するためには、(a)狭い領域でも色の識別ができるように図をデフォルメする、(b)広い領域では前報で報告したよう網かけ密度20~30%が最適であるが、狭い領域では10%程度にする、などの必要がある。また、これらの実現には、図のどこを強調し、または省略するのか等、事前に行う講義担当者との入念な打合せが重要となると考えられる。
今後、講義で使用し、さらに使いやすいカラー版触図に改良していく。

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