ポスター発表
P-R-26
視覚障害者の訪問型歩行訓練依頼のきっかけ:
歩行訓練士によるブレーンストーミング
○尾形真樹(1)、豊田航(2)、早苗和子(3)、高橋芳枝(4)、林笑美(3)、箭田裕子(5)、大倉元宏(2)
(1)杏林大学医学部付属病院アイセンター、(2)成蹊大学理工学部システムデザイン学科、(3)公益社団法人東京都盲人福祉協会、(4)社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会、(5)社会福祉法人武蔵野生活リハビリサポートすばる
【目的】
視覚障害者の歩行困難調査はこれまでもあった。しかし、視覚障害者が歩行訓練を依頼した「きっかけ」の調査は未だない。歩行困難があってもきっかけを得られず、歩行訓練に至らない視覚障害者も多い。そこで視覚障害者が訪問型の歩行訓練を依頼するきっかけを探ることで,今後の訓練のあり方を考える一助としたい。
【方法】
訪問型の歩行訓練経験のある訓練士5名(平均8.7±7.1年)が4回(平均100分)のブレーンストーミングを実施し、経験を基に訓練依頼のきっかけを列挙した。きっかけをKJ法により分類し、視覚障害者が歩行困難の改善方法を体験しやすい環境を検討した。
【結果】
訓練士によるブレーンストーミングの結果、きっかけは全33項目があげられた。そして、白杖(12.12%)、行動範囲の拡大(21.21%)、安全な歩行欲求(21.21%)、環境の変化(12.12%)、視機能の変化(12.12%)、他者から勧められた(12.12%)、その他(9.09%)の7つに分類できた。
【考察】
訓練士があげた視覚障害者が訪問型の歩行訓練を依頼する「きっかけ」のうち、長期間の指導を必要としそうな白杖に関連した項目は全体の1割程度だった。それ以外に、電車やバスを利用したい、階段の降りが怖い、引っ越した、見えにくくなった、人から危ないといわれたなど、今現在の問題をその都度改善したいという希望が9割を占めていた。このことから、訪問型の歩行訓練では、視覚障害者の直面する問題に対処する技術を、訓練士が繰り返し提供することが必要だとわかった。またこれにより、問題以前と同程度の安全な歩行が可能な状態を維持し続けられるように支援することの重要性が示唆された。そのような環境として、安全な歩行を気軽に体験できるワークショップの開催、医療機関内で杖の操作にこだわらない歩行困難の改善を助言することなどは、その一例となるかもしれない。
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