研修事業実施報告書
視覚障害リハビリテーション協会主催2004年度研修事業
テーマ:中途視覚障害者への点字触読指導法について
期日: 平成17年3月24日(木)・25日(金)
会場: 日本盲導犬協会・盲導犬訓練センター
申込: 35名
参加者:33名(会員13名(当日会員3名)・非会員20名)
参加者は会員よりも非会員が多く、中途視覚障害者の点字触読に関わる人たちの多くが、リハビリテーションの枠外で活動していることを感じさせる。図書館を中心とした情報提供施設10名、盲学校6名、リハ施設5名、ボランティアグループ4名、授産、福祉協会、眼科病院などその他の施設が8名であった。参加者は職員が中心で、7,8名のボランティアが参加されていた。
点字指導については、下記アンケート結果にみられるように、「現在実施している」ものが16名と半数近くで、「したことはあるが現在していない」の7名を加えると、指導経験者が過半数であった。
点字指導の実態としては、週に1.2回、2〜5人程度に6ヶ月程度指導し、短い単語、文章が読める程度で、充分な触読技能の習得にはいたっていない様子がうかがわれる。
研修会の日程、および内容については、「点字触読法」「指導マニュアル」の解説、「触読指導実技」を行い、最後の「意見交換会」では、事前アンケートの自由記述にみられる、参加者の「参加の動機」「課題」は解決されたとの感想が多く寄せられ、今回の研修目的は達成されたと評価する。
アンケート結果
1. 中途視覚障害者への点字指導をされていますか。
@ 現在している → 質問2.以降へ 【16】
A したことはあるが、現在はしていない。 → 質問2、以降へ 【7】
B 今後する予定がある。 → 質問7、へ。 【7】
C 指導法に関心がある → 質問7、へ。 【7】
2. 点字指導の頻度はどれくらいですか
@ ほぼ毎日(週3日以上) 【5】
A 週に1・2回 【12】
B 月に2回 【1】
C 月に1回 【3】
3. あなたが担当している点字学習者はどれくらいいますか。
@ 1人 【4】
A 2〜5人 ( 人) 【12】
B 5〜10人( 人) 【3】
C 10人以上( 人) 【2】
4.点字学習期間はどのくらいですか。
@ 3ヶ月以内 【6】
A 3〜6ヶ月 【4】
B 6ヶ月〜1年 【7】
C 1年以上( 年) 【4】
5.点字の読みの上達はどのくらいですか。
@ 読書を楽しむことができる( 人) 【5 10人】
A 短い単語、文章が読める ( 人) 【14 25人】
B 書けるが、触読できない ( 人) 【8 24人】
C 途中で学習を断念した ( 人) 【3 3人】
6.点字指導で何か問題がありますか(複数回答 可)。
@ なかなか触読できるようにならない 【8】
A 点字触読指導に自信がない。わからない。 【10】
B 中途視覚障害者が触りやすい点字があればと思う。 【5】
C その他( ) 【4】
7.研修の受講動機、および研修に期待するものは何ですか。(自由筆記)
○ 高年齢の方の学習希望が増えており、どう援助するかなどサークルへ持ち帰りたい。
○ 正しい読み方を知りたい。学校勤務で触読指導ができるものが2名しかいない。中途障害で点字指導を必要とする人が増えているので戦力になりたい。実践力をつくような研修を。
○ 点字指導全般、正しい触読指導の方法を研修させていただき職場で役立てたい。
○ 多くの方を指導された経験から導き出した方法を学びたい。
○ 今は先天盲の方より中失者の方が多いようで、点字を覚えたいという希望も多い。希望をかなえてあげたいと思う。その際にどのようにすれば良いかより良い方法を知りたい。
○ 指導法を身につけて今後の点字指導に活かしたい。
○ 現在はボランティアの講習を行っているが、それとは全く別の指導法となると思うため。
○ 自身触読ができません。体系的な指導法を学ばせていただき、今後の参考としたいと思います。
○ これから勉強したいと思います。
○ 点字図書館からの依頼。
○ 点字図書館を退職し、地域における中途視覚障害者向けの事業を立ち上げたいと思っています。今回の研修は、その事業の中のひとつのメニューとして提供できればと思い参加しました。
○ 学習者により効率よく、正確な触読をしていただくために研修を深めたいと思って参加。
○ "こうしたら少しでもわかる"という方法があれば勉強したいと思っていまして、ずっとこの研修を待っていました。
○ 1年間指導を試みましたが、このままでは読めるようにはならないと思う。何か突破口を見出したくて受講します。
○ 点字指導を自身を持ってできるようになりたい。文字から遠ざかっている人たちなので、読むことに興味を持って、点字を好きになって欲しいと思います。
○ どうしても点字を生活に入れなければ生きていけないという方々ではないので、取り組みが弱くなかなか進まない。展示の読めない方へのルール説明がわからない。思うようにいかない。
○ 盲学校の生徒の中には大人の人もいて学習されている。墨字も使えない、点字も学習していない人に対し学習を進めていくうえでの文字の習得をめざしたい。
○ 今後の指導に活かしたい。
○ 教材はあるものの、指導法は学習者にあわせて工夫している状況なのでいろいろな情報を得たいと思う。
○ 現在の指導でよいかどうか、今後も続けようと思っているので勉強にきました。
○ 重複障害の(知+視)者向けの教材について。
○ 60歳以上の利用者が増え、点字を活用しての生活の向上を目指す方が増えている。L点字を使っているが触読が困難なため、受講し利用者に役立てたいと思った。
○ 50音をマスター(触読できるようになった)してからの練習教材に苦労している。どのようなものがより効果的か、参考になるものがあったら教えていただきたい。
○ 形態弁別読み、縦読みの創始者から直接その大切なポイントを学びたいと思って参加しました。
○ 短期間で行っています。仙台短期リハで好評です。
プログラム
1日目: 10:00〜10:15 受付
10:15〜10:20 あいさつ・ガイダンス
10:20〜11:05 点字触読指導法研究の動向(報告:原田良實氏)
11:05〜11:10 休憩
11:10〜12:00 指導法及び教材について(解説:原田良實氏)
12:00〜13:00 昼食・休憩
13:00〜14:00 指導実践(指導:原田良實氏)
14:00〜15:00 グループ別指導実践 @
15:00〜15:30 休憩
15:30〜17:00 グループ別指導実践 A
18:00〜 情報交換会(懇親会)
2日目: 9:30〜 9:45 受付
9:45〜10:45 点字使用者が指導する時の注意(講義:松谷詩子氏)
10:45〜10:50 休憩
10:50〜11:30 点字使用者が指導する時の指導実践(指導:松谷詩子氏)
11:30〜12:30 意見交換会・閉会式
講義資料
10:20〜11:05 点字触読指導法研究の動向
1.点字指導の現状
1−1.点字の読み方は異なる
(1)視覚障害者が読む
・ 先天・幼児期視覚障害
・ 中途視覚障害
○高年齢ほど触知覚が悪い
○言葉の知識・読書の経験はある
(2)晴眼者(点訳者)が読む
1−2.点字を読む人はどれくらいいるか
視覚障害者数:301,000人
視覚障害児数: 4,800人
点字ができる: 32,000人
できない:229,000人
必要: 17,000人
不必要:201,000人
年齢別視覚障害者と障害発生時期
年齢 障害者数 障害発生年齢
0〜17 4800 72000
18・19 ↓
20代 7000 45000
30代 8000 ↑
40代 16000 ↓
50代 47000 90000
60〜64 29000 ↑
65〜70 37000 ↓
70〜 155000 40000
1−3.これからの点字使用者
中途視覚障害者が中心
点字が読めない・点字を読みたくない・読めても遅い
2.中途視覚障害者の点字指導
2−1.中途視覚障害者の点字修得が課題
点字学習の場の確保
点字学習法(指導法)
2−2.点字指導法
確立されていない。各施設・グループが独自に実施
「点字学習指導の手引き(改訂版)」慶応通信 1995
「中途視覚障害者 点字指導担当職員研修会」(H12/9/1・2 日盲社協リハ部会)
「中途失明者の個に応じた最適点字サイズ評価と点字触読指導プログラム及び教材の開発」(科学研究費補助金・基盤研究 特殊教育総合研究所 澤田真弓研究員 H13年度〜15年度)
「中途視覚障害者点字指導担当者研修テキスト 点字指導マニュアル・教材」日盲社協 2001.3
実態調査から
○訓練終了時の点字読み能力(実用的 1頁・32マス・18行・15分以内)
@ 実用的 161人
A なんとか 202人
B 識別程度 131人
C 読めない 48人
★全日本点字競技会 1分間 440字 ★名古屋リハ 110字
○指導員は触読できるか
@ 全員できる 7
A 一部できる 5
B 触読できない 37
○利用者と同じ方法を学んだか
@ 学んだ 13
A 学んでいない 34
○点字修得が困難になっている要素
@ 点間・文字間 22
A 指導法 9
B 触知覚 31
C意識の低下 15
2−3.中途視覚障害者の点字の読み方
○読み指導上の注意点
@ 指は水平に右にスライド、継時的に読む 40
A 指は立てて、1段ずつ上から下に読む 5
B 特別に指示しない 3
縦読みが有効
「中途失明者の点字指導に関する研究(1) 点字触読指導における縦読みの有効性についての検証」
L点字が有効
「中途失明者の点字指導に関する研究(3) 点字サイズの違いによる触読の比較」
点字サイズの比較
点字の種類 点の大きさ 1・4点間 4・1点間 1・2点間
通常サイズ 1.4 2.0 3.2 2.25
パーキンス 1.4 2.65 5.13 2.65
Lサイズ 1.9 2.4 3.84 2.7
11:10〜12:00 指導法及び教材について(解説)
「中途視覚障害者への点字触読指導マニュアル」 読書工房 2800円+税
読書工房(電話・FAX 03-5982-0502 info@d-kobo.jp)
18:00〜 情報交換会(懇親会)
【視覚障害者にとって点字ってなんだろう】
視覚障害=情報障害(空間情報・プリント情報)
文字情報: 選択の時代 → 電子文字>点字
情報入手手段の多様化(携帯電話・パソコン・音声タグ等々)
パソコンの利用
毎日利用する:10,000人
たまに利用 : 5,000人
利用しない:280,000人
25日 9:45〜10:45
中途視覚障害者に対する点字触読指導
―日本点字図書館点字教室における実践―
2005/3/25
(社福)日本点字図書館図書情報課 松谷詩子
1 点字教室の概要
@個別指導を原則とする小グループ制。
A1コマ70分で、学習者は週に1度受講。
B受講は最長3年までという年限を設けている。
C学習援助に当たるスタッフは、晴眼の点訳者と点字教室で学んだ中途視覚障害者。
2 プログラムの骨子
@読み方のトレーニングからスタートし、基礎的な「点字の触読」が定着した時点で書き方の練習を導入。
A触読指導の初期段階においては、垂直・水平読みを奨める。
3 視覚障害者が触読指導に当たる際の留意点
@背筋は伸びているか、うつむいていないか、肘を極度に張っていないか、点字用紙はまっすぐに置かれているかなど、基本的な注意点については、常に学習者の状況を意識しておく。姿勢の悪化は、声から判断できることが多い。
A指の動き方については、細かい点まで確認することは不可能。場合によっては、学習者の指が置かれている文字の隣りに、援助者が指を添えて、学習者の指の動きを把握したり、制御したりすることもあるが、読みを妨げないように細心の配慮が必要。
Bあらゆる場面で「声かけ」がなによりも大切。学習者みずから、指の動きやその他読み方に影響を与える要素(姿勢、紙の置き方など)をモニターし、問題点に気づく機会を提供することにも繋がると考える。
4 スタッフ間の連携
@援助体制としては、ある学習者について担当を決めるのではなく、ローテーションを組んで対応。「申し送り」のシステムを作って、スタッフ間の共通認識を保つ。
A晴眼の援助者と視覚障害の援助者それぞれの役割を相互に認識し、連携することで学習者に対する援助の充実を図っている。「学習者の読み方」に関する技術的なポイントの細かいチェックは、晴眼者の協力が必須。その一方、学習過程における心理的なサポートについては、経験者である中途視覚障害スタッフの存在が極めて大きな役割をはたしている。
参加者感想・意見
・自分が自我流で点字を覚えたときに、縦読みをしていた。
・「横にスライドさせて読みなさい」と習ったが、それでは、10分間に40文字しか読めない人がいた。
・L点字が中途視覚障害者にとって有効なのがわかった。点字印刷機を導入したい。
・1対1指導で、指の動かし方等留意しながら1段ずつ意識して形を触察するように、適切な声かけをすることが大事なのがわかった。
・この方式を帰ったら研修会で広め、1対1指導できる体制を組みたい。
・点字触読指導法には、他動スライディング法、半マス読み(木塚方式)、縦読み(原田方式)等あるが、対象者により選択すればよい。
・盲導犬協会の見学がよかった。