第8回日本ロービジョン学会学術総会
第16回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
合同会議 報告

1.合同会議を終えて

2007年度大会 大会長 岡田弥

 3年目、そしてひとまず区切りの「合同会議」が終了しました。
 日本ロービジョン学会の会長の白木さんも私も大きな大会を担当するのは初めてとあり、昨年、一昨年の合同会議を参考にしながら、不安いっぱいのスタートでした。昨年度は発表の時間設定がかなりタイトだったこともあり、今年は少し時間的余裕を持たせることを目標に、教育セッションやランチョンセッションといった企画を割愛しました。昨年度が非常に盛りだくさんだったので少し物足りなさを感じた方もおられるかもしれませんが、それでも特別講演1題、シンポジウム4題、ワークショップ1題、指定講義5題、一般口演34題、ポスター発表62題と、合計107題の発表をいただくことができました。参加者も822名(うち会員399名)と昨年、一昨年を上回る人たちに参加していただいて、盛会のうちに終えることができ、胸をなで下ろしているところです。
 さて、3年間の合同会議を皆さんはどう感じられたでしょうか? 私としては、これまで聴くことの少なかった医療分野の発表を聴き、多くの眼科医や視能訓練士とのネットワークが広がったことは、福祉分野で仕事をする一個人としての私にとっては大きなメリットでした。一方、大会の規模が大きくなればなるほど、場所や日程、実施内容の調整が大変になり、「合同」だから実施できない、自由がきかないといった企画がたくさんあることも実感することができました。
 来年は、視覚障害リハビリテーション協会の単独での大会に戻って再スタートの年です。単独開催だからできること、視覚障害リハビリテーション協会の特色を活かした大会で、「単独開催もいいなあ」と思える大会になることを願っております。 

2.合同会議に参加して

(1)特別講演「日本におけるロービジョンケアの過去、現在、未来」     講師: 簗島 謙次(やなしま眼科)
 ロービジョンケアに長い間携わってきている簗島先生の講演ということで会場は熱気あふれる様子であった。
 講演の中ではロービジョンケアと呼ばれる前のことから、ここ数年の動向が医療現場の視点を中心に話がされた。また、眼科のドクターということもあり、眼科内でできるロービジョンケアについての話があった。特に現状よりも一歩踏み込んだ形で眼科レベルでのQOL向上ということで、院内のスタッフでロービジョン・ケアを進めていくという提案には興味深いものがあった。
(原田 敦史)


(2)シンポジウム
T「視覚障害乳幼児の発達と支援」
 このシンポジウムでは、大阪教育大学教育学部山本利和教授より、まず子ども達の発達の様子を氏の実践の記録ビデオによって判りやすく提示された。そのビデオに登場するお子さんの保護者から、お子さんの成長とそれに関わった支援の重要性についての報告がされた。それを受けて、大阪府立母子保健総合医療センターにおいて長年、視覚障害乳幼児の支援を行ってきた初川嘉一先生より『保健センターにおける小児ロービジョンへの取り組み』について報告があった。医療機関での診断、説明の重要性に加え教育機関や支援機関、親の会との連携についてもプラマリーケアを行う医療機関としての役割であるという報告であった。最後に、視覚障害乳幼児のを支援機関を代表して、大阪市立盲学校の今井理知子先生より『親子相談教室「こぐま教室」の実践から学んだこと』として氏が関わっている「こぐま教室」の実践報告がなされた。盲学校における視覚障害乳幼児の支援の状況が詳しく説明され、保護者の支援にたいする役割についても報告された。
 視覚障害のリハビリテーションやロービジョンケアの研究発表では、成人や中途視覚障害の報告が多い中で乳幼児に焦点をあてたシンポジウムは新鮮であり、彼らへの支援の重要性が示された有意義なものであった。冒頭に行われた保護者の方の体験報告は参加者にとって、子どもの成長や発達において視覚障害がどのような影響もつか、それに対する支援の必要性などということについて共通の視点を持つ事ができフロアの共感を得ていた。これを引き継いで医療と教育のそれぞれの立場からの実践報告がなされたことは、福祉、医療、教育、当事者の全ての視点で視覚障害乳幼児のケアを包括しており、視覚障害リハビリテーション協会と日本ロービジョン学会の合同会議にふさわしいシンポジウムであったと言えるだろう。次年度より合同会議ではなくなるが、それぞれの会において今後も乳幼児をふくめてロービジョン、視覚障害を考えていく一つの布石になったのではないかと思う。
(新井 千賀子)


U「地域で働く視覚障害者生活訓練指導員の現状と課題」
高知県で視覚障害者自立支援システムの構築活動に視覚障害者生活訓練指導員と共に取り組んで行く中で、訓練指導員が視覚障害者のリハビリテーションの中核的役割を担う専門職種であるという確信を持つようになったのであるが、この職種はどんなことをする専門職なのかということが世間一般にも、眼科医をはじめとする医療・教育・福祉の関係者にもほとんど知られていないという現実に愕然とした。
 そこで、「地域で働いている訓練指導員が何をしているのか」の現状把握と訓練指導員同士の相互理解の促進を目的として、このシンポを企画し座長を引き受けた。
シンポジストは、前川 賢一(NPO特定非営利法人 アイパートナー)、永井和子(長崎こども・女性・障害者支援センター 障害者支援部更生相談課)、金平景介(高知県身体障害者連合会)ベテランと新人の3人にお願いした。
 「訓練指導員の専門性とは何か」という私の問に対して「目の不自由な人は、皆私のところに来て下さい」と答えてくださった永井さんをはじめシンポジストは皆、「視覚障害に関して必要があれば何でも受け入れ、解決に近づくよう努力する」という気構えの中で、地域の実情に応じた仕事をしていることを明確にすることができたが、「訓練指導員の専門性」の追求は始まったばかり。来年度の大会にもこのことに関連した企画を試みて見たいと考えている。
(吉野 由美子)


V「白杖および白杖を用いたモビリティ技術の今昔」
 白杖の企画・製作や、白杖を用いた歩行訓練に関わるシンポジストを迎えて、日本における約40年間の白杖と歩行訓練の変遷について、プレゼンテーションと意見交換がおこなわれた。
 時代とともに、白杖に求められる役割は多様化し、ロングサイズの直杖以外に持ち運びが可能な携帯式のものや、高齢者用の補助杖などの種類が作られるようになった。また、杖の先端に取り付けるチップ(石突き)も、安全性と歩きやすさ、使いやすさを求めてさまざまな種類が開発されるようになってきている。
 同時に、歩行訓練がおこなわれる環境も、視覚に障害のある人が施設に入所して訓練を受ける形式から、訓練士が自宅に伺っておこなう訪問型や、病院内で短期間の訓練を受けるかたちなど多様化してきている。
 半世紀近く経って、人、道具、サービスがお互いに影響を受けながら、時代によってどのように発展してきたのか良く分かる内容だった。
 上のシンポジウムをはじめ、大会ではたくさんの人の意見や取り組みから多くの刺激を受けました。同時に持ち帰ったものが冷めないように、どうやって地域に役立てていけばよいのか、大きな課題を手土産に帰ってきました。
(寺田 真也)


IV「徹底検証!視覚補助具」
 視覚障害者の補助具として拡大鏡,拡大読書器,単眼鏡,遮光眼鏡をそれぞれテーマにしシンポジウムが行われた。
●「近見補助具の選定 視能訓練士の立場から」として拡大鏡についてを林弘美さん(国立身体障害者リハビリテーションセンター)、
●「拡大読書器の選定」として拡大読書器についてを市川としみさん(社会福祉法人 日本ライトハウス職業・生活訓練センター)、
●「遠用補助具についてー単眼鏡を中心にー」として単眼鏡についてを山村麻里子さん(京都府立医科大学)、
●「遮光眼鏡」として遮光眼鏡についてを田中恵津子さん(杏林アイセンター)、
の4題について、現場で選定・使い方の指導を行っている方をそれぞれお迎えして,実践的な報告を中心に発表が行われた。
 視覚補助具は多種多様な製品が発売され、多くの種類が存在する。その中から視覚障害者自身だけで自分にあったものを選定することは難しい。
 医療関係、福祉関係、眼鏡店など選定を手助けしてくれる施設を利用することが大事なことである。そして、視覚障害者と専門家が一緒に、日常生活の中でどのような見え方をしているかを理解・評価し、どのような場面で補助具を使いたいのかを明らかにすることが自分にあった一つを選定するポイントではないだろか。また、視覚補助具は高額な商品も多いので、補装具や日常生活用具といった公的サービスの利用を検討して欲しい。
 補助具選定に関わるものとして、改めて当事者に合ったものを選定・利用してするために大変参考になり力を尽くしたいと強く感じた。
(金平 景介)


(3)ワークショップ「特別支援学校への制度改革はチャンスかピンチか?」に参加して
 まず全国盲学校長会副会長で大阪市立盲学校長の小西和朗氏が、幅広い年齢を対象に、障害の多様化、重複化に対応して行われている盲学校の教育の現状を説明。新制度の課題として現実の施策面はまだ模索段階であること、地方ごとの格差が問題となる可能性があることなどを指摘、盲学校としては今までの実績を継続し発展させることが大切であり、小中学校との連携、協力が重要だとした。
 指定討論として、私は、眼科医の立場からみると教育現場における環境支援が十分に出来ていない例もあり、教育と医療の連携が必要だと指摘。特別支援教育により高まった支援の自由度を有効に使うためにも助け合うだけでなく、お互いに高めあう連携をと呼びかけた。
 前全国盲学校長会長の神尾裕治・長野大学社会福祉学部教授は総合的な立場から特別支援教育制度の現状と展望を解説。地域のセンター的機能が盲学校の役割として明確にされたが、盲学校の規模縮小による人員配置の減少、短期間での人事異動などがマンパワー不足を招いており、期待に応えるだけの専門性を保ち続けられるかが課題だとした。一方で、教育だけでなく、地域の視覚障害の拠点として盲学校が果たす役割は大きいと結んだ。
 地道に積み上げてきた視覚障害教育の重要な部分を持続可能なものにするためには教育と医療など関連する多くの分野がお互いに専門性を理解し合い連携することが必要だ。その協力体制をどう構築していくか。特別支援教育制度によって新たに出来た枠組みをチャンスと捉え、今後はより具体的な内容に踏み込んで議論していく必要があるし、その予定である。
(佐渡 一成)


(4)一般口演  今年、個人的には、3回の合同会議で最も多くの口演を拝聴した。ここでは、良かったことを感想にすべきなのかもしれないが、どうしてもはっきり文章にしておきたいことがあるのでここに記す。
 一般口演OU−04「理療教育課程で学習する利用者と目の疲労感」という演題についてである。発表時間超過のため、残念ながら質疑応答の時間がなかった。この口演の後、複数の先生方とディスカッションしたが、発表全体の流れが、「目が疲れる→目が悪くなる (疾患が進行する)」というニュアンスであったため、異口同音に違和感や問題を述べていた。
 何十年も前に解消されたはずの「目を使うと見えなくなると言う迷信」、この迷信を専門家が科学的根拠も、データも提示しないまま、まるで視覚の利用やそれによる疲労が障害の悪化に結びつくような発言をしていた(少なくともそのように受け取られた)ことをそのままにしてしまったことは、ロービジョンケアに関わっている現場の眼科医としては見過ごせない問題だと思った。
 会場に参加していた一部の人には「拡大読書器を使うと目が疲れて悪くなる」という古い迷信が残ってしまったかもしれない。このような迷信がまかり通ると、見えているのに点字しかおそわれないロービジョン者が出てきてしまう。一般口演OU−04は、ロービジョンケアを否定した演題であったと評価することも可能な問題発表であった。
 来年の仙台での大会では、この問題を取り上げ、過去の迷信が復活しないようにしっかりと改めて総括する予定である。
(佐渡 一成)


3.合同会議・併設福祉機器展示会

 今年度の合同会議併設の福祉機器展示会は、場所が大阪、そして同時期に同様の展示会を開催されている日本ライトハウスとの共催事業として開催し、名前も「全国ロービジョンフェア・展示会2007」としました。
 期間は合同会議の後半2日間でした。
 同時期に他の主催者の展示会が開催されていて、毎回出展していただいているところが出展できない事もありましたが、新たに出展してくれるところもあり、37社/団体・47小間と過去最大規模の展示会となりました。
http://www.lowvision.jp/list/ をご参照ください。
来場者は推計つぎの通りです。
 23日(日) 一般来場者数   430人
 24日(月) 一般来場者数   210人
 両日とも、合同会議参加者数  800人
 総合計          1,440人
(園 順一)