第7回日本ロービジョン学会学術総会
第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
合同会議 報告
1.合同会議を終えて
視覚障害リハビリテーション協会会長 中村 透
「合同会議」は今回で2回目です。昨年のテーマは「連携」、今年は「挑戦」でした。何に「挑戦」できたか?それぞれ、大会に参加していただいた方には色々とおわかりいただけたのではないかと思います。
もう一人の大会長である小田さんは秘かに「今回は100件を越える発表が欲しい」と、個人的な「挑戦」を口にしていました。ふたを開けてみると、100件はゆうに越える発表申し込みがありました。そのテーマも多岐にわたり、合同会議にふさわしいものとなったように感じます。
また、教育セッション、ランチョンセッション、見学ツアー、市民講座など、新たな試みも展開されました。内心「そんなに詰めて大丈夫?」とも思っていましたが、ところがどうして、どれも参加者で一杯でした。見学ツアーは、おそらく夜の8:00頃からだったと思いますが、「日中のセッションが終わったら、夜は飲み会だね!」と考えていた私にとっては「まじめだなあ、すごいなあ」とただ感心するばかりでした。教育セッションには、朝早くから一杯の人が詰めかけました。「こんなところにもニーズはあったのか!」と驚くばかりです。最終日の市民講座は、会場が埋まるほどではなかったものの、内容は濃く、まさに、一般社会の理解を得ていくことの大切さをあらためて考えさせられました。
大会期間を通じて700名弱の人に参加していただきました。これはリハ協会単独でもLV学会単独でもなしえないことです。それだけ、集まる場所、議論する場所が必要とさ れているということだと思います。
来年に向けて、更に質の高い議論ができる場所を作っていく必要性を感じました。合同会議は来年度まで決まっています。その次を作るのは協会の会員の声だと思います。一緒に「今後」を考えることができれば幸いに思います。
2.アカデミック・プログラム
(1)指定講義
指定講義Tでは中村透氏(日本盲導犬協会)を座長に、清水美知子氏より「視覚障害者の歩行を取り囲む諸要因の変化と、歩行訓練の今後」の発表があった。主な話題として歩行訓練、訓練士の今後について報告がされた。特に視覚障害生活訓練指導員養成機関修了者の歩行訓練への関わりの度合いを調査したアンケート結果の報告はフロア参加者も非常に興味をもって聞き入っていた。養成課程の修了生は私も含めて会場に多くいたが、いい刺激になったのではと思う。
今回は養成機関全体としての調査でなかったが、今後の調査についても期待するという感想も多く聞かれた。時代が変わっていく中で、訓練士が今後どのような方向に進んでいくのか、進んでいくべきなのか考えさせられる講義であった。
その他の指定講義でもロービジョンサービス・QOL・自立支援法とロービジョン者を取り巻く環境についての最新の講義が行われた。また視覚障害ユーザのIT活用についても講義が行われ、音声でのパソコン活用の紹介は普段接する機会がない方にとってはよい講義だった。
いずれの講義も盛況で活気溢れる時間であった。
(国立神戸視力障害センター 原田 敦史)
(2)シンポジウム
シンポジウムT 「今、視覚障害者の就労の課題は何か?」
就労についてのシンポジウムは、中村透氏(日本盲導犬協会)をオーガナイザに5人のシンポジストの発表があった。吉江和夫氏(ライオン株式会社)は全盲社員の同僚の立場から、工藤正一氏(タートルの会)は、中途視覚障害者の復職を支援する立場から、津田諭氏(日本ライトハウス)と北林裕氏(東京ワークショップ)は就労を支援する施設職員の立場から、そして大橋由昌氏(朝日新聞社)は全盲で就労している当事者の立場から、とそれぞれ異なる立場からの発表であった。
津田氏と北林氏が口を揃えて、障害者自立支援法の施行による就労支援体制の悪化を取り上げていたのが興味深かった。障害区分にこだわらないサービスの提供が職員の専門性を奪い、サービス提供の日割り・時間割がフォローアップや体調を崩した利用者へのサポートの機会を奪っているという。障害者自立支援法は何か間違った方向に向いてしまっているのではないかと感じた。
(日本ライトハウス 岡田 弥)
シンポジウムU 「疾患別ロービジョンケアについて」
9月17日午後2時から、済生会新潟第二病院の安藤伸朗先生がオーガナイズされたシンポジューム「疾患別ロービジョンケア」が行われた。シンポジストは6人で、どの内容もとても興味深いものであったが、特に平和眼科の富田先生の「小児のロービジョンケア:眼科開業医の立場から」と宮城教育大の猪平先生の「医療と教育の機関連携の課題から」の2題が私の興味を引いた。
私の住んでいる高知で、視覚障害の相談に携わっていると、命の危機は脱したが、重い障害をもってしまった極小未熟児の視覚障害の問題が最近徐々に増えて来ているように思える。所が全国的に、いわゆる手帳をもっている視覚障害児は4800名足らずと数が少ないためなのか、視覚障害の問題というと、ロービジョンケアにおいても、福祉の分野でも取り上げられるのはひたすら中途視覚障害者の問題ばかりである。
そんな雰囲気の中、この合同学会でこのようなテーマが取り上げられたことは、大変意義深いと思った。これからも、視覚障害児の医療・福祉・教育の面について、引き続きテーマが設定されることを強く希望したい。
(高知女子大学 吉野 由美子)
シンポジウムV 「ロービジョンのQOV評価」
不二門尚氏(大阪大学)をオーガナイザに、ロービジョンのQOV評価について、4名より以下のような報告がなされた。
石子智士氏(旭川医科大学)からは、偏心固視領域を、SLDを用いて評価する方法、山縣祥隆氏(山縣眼科医院)からは、緑内障などで視野が障害された場合の歩行の評価についての報告があった。
また、不二門尚氏(大阪大学)からは、黄斑移動術などで周辺視野の融像、立体視が障害された場合に歩行への障害をきたすという観点から周辺立体視の新しい評価法の検討結果が報告された。
さらに、阿曽沼早苗氏(大阪大学)からは、網膜変性症例について、遮光眼鏡に関してその評価法の検討結果が報告がされた。
いわゆる疾患別ということではなく、機能的立場からQOVを評価するという観点で、ロービジョンに関する理解を深めることのできるシンポジウムであった。
(島根ライトハウスライブラリー 浅野 紳)
(3)指定ポスターセッション 「視覚障害者の地域生活支援〜各地の取り組み〜」
このセッションでは、地域生活支援について視覚障害関係5名、障害全般2名の方から実践報告をいただいた。7名の方それぞれ活動内容や、実践経過に違いがあるものの、「地域で生活する一人ひとりを支える。そのためには一人ひとりが抱えるニーズと向き合い必要な支援を提供する。そこから地域の支援ネットを広げていく。」といった点は共通するものであった。制度が如何に変遷しようとも、それのみで人々の「生きる」ことを支えるには不十分であり、各々の地域で暮らす方たちのニーズと向き合い、共助を中心とする支援体制つくりを展開する中で、公助を引き出すといった取り組みの必要性を確認することができたセッションであった。
セッションには100人ほどの参加者がこられ、セッション終了後も熱心に発表者と意見交換をされていたことが印象的であった。
(国立伊東重度障害者センター 小田島 明)
3.オプショナル・プログラム
(1)教育セッション
今回の合同学会のオプションプログラムとして、ロービジョンケアや視覚障害者福祉の分野の初学者を対象に、9月16日の朝9時から「教育セッション」が行われた。1セッション50分で、二つのセッションが同時並行に開催され、参加者は、二つの話題について聞くことができる仕組みになっていた。
講義内容は、「目の不自由な方を誘導するためのガイドヘルプの基本」、「ロービジョンケアの基礎」など。
私も、「視覚障害に関する福祉・教育の施設・制度の過去と現状」というテーマで、講師をさせていただいた。朝早くからの企画だし、特に私のテーマは、歴史的なことなので、あまり人が集まらないだろうと思っていたが、40人以上聞いてくださったのには驚いた。また終了後「視覚障害者とあんま・はり・灸などの三療業との関係が良く分かった」とか「もっと詳しく聞きたかった」などの反応があったが、視覚障害分野で仕事をしている人は、これらの知識を持っているのが当然だと思っていた私にとっては驚きであった。
どのセッションも予想以上に参加者が多く好評で、初学者の方たちだけでなく、この世界で長く働いている人たちも、「基礎的な知識」を学ぶ場所に飢えていたことを痛感させられた。
このような試みが1回だけで終わらずに、次の学会にも受け継がれたら良いのにという感触を持った。
(高知女子大学 吉野 由美子)
(2)合同会議・併設福祉機器展示会
今年度は展示会場のスペースにゆとりがあったこともあり、過去最大の36社・団体の小間数45を並べることが出来た。また、フリークライミングのコーナーも併設でき、約120名の方が体験ウオールで、クライミングに挑戦された。
http://www.monkeymagic.or.jp
また、今回は事前に出展内容をwebで公開し、参加者への情報提供をした。
http://www.odalab.org/jam2006/kiki.htm
見学できなかった方は、参考にしていただければ幸いである。
展示会2日間の来場者数は延べ1200名あまりであった。但し、ポスター会場と同一であったため、展示会のみの来場者数は把握できなかった。参加者を通じて、視覚障害者に情報が伝わることを祈願する。
(京都福祉情報ネットワーク 園 順一)
(3)市民公開講座 「見えにくくなってお困りの方へ ロービジョンケアでいきいきライフ」
合同会議主催の市民公開講座が最終日の午後1時から2時、東京女子大学講堂で開催された。あいにくの雨の中だったが、ロービジョンの悩みを抱える当事者や関心を持って集まって来られた一人一人の心に響く、勇気づけられる素晴らしい講演であった。
最初にコーディネーターの小田浩一氏(東京女子大学教授)から20年間のロービジョンの研究や臨床経験の成果によって、国民の生き方が変ってくる内容のお話を聞いていただきたいとの紹介があり4名の講師から次のような発表があった。
眼科医の立場から樋田哲夫氏(杏林大学医学部眼科学教授)は手術など治療で終わっていた眼科医の責任観念が変ってきている。正常に回復しない視力、視機能に対して患者のニーズに合わせたサービスを提供するロービジョンケアの必要性を認識するようになった。患者さんに最初に接するのは眼科医である。眼科医がロービジョンケアにかかわらずしてどうするのだと言われた言葉が印象的だった。
続いて新井千賀子氏(杏林アイセンターロービジョンルーム 視能訓練士)はロービジョンケアの実際を2症例を示して具体的に分りやすく紹介した。医療現場で治療と平行して早期から気軽に相談を受けて患者さんが元気を取り戻し生き生きと変っていく様子が良く伝わってきた。
患者の立場から丸崎光彦氏(東京都立文京盲学校教諭)は生まれつきのロービジョン者としての経験と白内障手術後のロービジョンケアで遮光レンズでまぶしさの解消や場面にあった眼鏡の処方によって読書が楽しくなったと喜びをユーモアを交えて話した。
また、小林幸一郎氏(NPO法人モンキーマジック代表)はレーベル病で突然の視力低下によって生きる希望を失いかけたが、ロービジョンケアでパソコンなどの補助具を身に付けて、再び生きる目標を見出した。視覚障害者にもフリークライミングの楽しさを知ってもらいたいとNPO法人を設立して代表として活躍している。健常者と対等に役割分担をしてできるスポーツだと生き生きと話された。
(愛媛県立松山盲学校 和田 浩一)