第6回日本ロービジョン学会学術総会
 第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
 合同会議 報告

1.特別講演

特別講演T
 特別講演Tは、国立身体障害者リハビリテーションセンター病院の簗島謙次・第三機能回復訓練部長より、「視覚障害リハビリテーションにおけるチームプレーの重要性」と題して行なわれました。
 例年の研究発表大会と異なり、初めて日本ロービジョン学会との共同開催となった今大会のテーマは「連携」ですが、この「連携」について、長年ロービジョンケアに取り組んで来られた眼科医の立場から、より具体的にお話しいただきました。また、その内容は、視覚障害リハビリテーションに携わる眼科医以外の立場の参加者にも分かりやすいものでした。
 講演の中では、視力検査や視野検査など視機能の検査結果で患者を見るのではなく、視機能の低下により日常生活のどのような場面で患者が困っているのか、眼科医がそのことに気付くことが大切であるとの話がありました。このような話はぜひ、これからのロービジョンケアを担う現在医学部で勉強中の学生や、より多くの眼科医の方達にも聞いていただきたいと思いながら聞いていました。
 ただ、眼科医だけがこのような視点を持っているだけではだめで、ロービジョンケアを成功させるためには、眼科医だけではなく、各分野の専門家との連携が重要です。互いの専門性を尊重しあいながら、しかし、誰のためのロービジョンケアなのか、この最も基本的で重要な点を見誤ることなく、チームプレーを組める体制を築いていくことが重要であると、熱意あふれる口調で話されていました。
(久保ますみ)

特別講演U
   国際ロービジョン学会の会長アリス・アーディティを招いて行われた特別講演は、「ロービジョンの衝撃を世界中で軽減するには」と題して、日本盲導犬協会の福井良太さんの逐次通訳付きで45分間行われました。アリスというと女性と誤解する日本人が多いかもしれませんが、Ariesは男性名です。彼は実験心理学で博士号を取得したロービジョンと視覚の研究者で、現在50代、ニューヨークのライトハウス・インターナショナルのゴードン・アーリーン研究所の研究員をしています。今回の講演は今年4月にロンドンで開催された国際ロービジョン学会の国際会議ヴィジョン2005で彼が報告した内容とほぼ同じ内容でした。昨年10月にオスロに世界中から25人の専門家を招いて5日間ワークショップを開催し、そこでロービジョンの問題、特に全世界的に増加しているロービジョン人口が今後10年に与える影響と対策について協議した、その結果を述べたものです。内容としては、ロービジョンの定義、人口推定、盲との関係、市民権としてのロービジョン・サービス、経済的社会的価値のあるサービス提供の形などについてでした。世界中どこでも視覚障害といえば盲中心に進んでいて、人口から言えば全盲の人よりもロービジョンの人の方が何倍も多く、社会サービスの中にロービジョンへの対応を組み込むことが重要なのに、それがなかなかうまく行っていないということを明確に述べたものでした。ロービジョン・サービスの現状を世界的に見てみると、包括的で適切なサービスが提供されている場合は非常に少なく、全盲の人と同じサービスしかない場合や、ルーペの貸し出しのようなごく限られたサービスのみになっている場合、あるいは全くない場合が多いことも指摘されていました。要するにロービジョンへの対応は、どの国でも遅れているし、今後もなかなか進展しにくい要素があるということです。全盲に対する社会的認知と比べ、ロービジョンということが理解されにくく、また受け入れられにくいことも一因です。ロービジョン・サービスはロービジョンになった人の経済活動や社会参加を促進し、費用対効果の高いものですが、それをはっきりさせ普及させるためには、成果を科学的に証明するアウトカム研究が今後重要になります。車椅子が一般に受け入れられて来ているように、遮光眼鏡を掛けたり、ルーペを使っていろいろな作業をしたりする姿が普通のこととして受け入れられ、ロービジョンになった誰もが適切なサービスを受けて能力を最大限発揮できるように、あらゆる場面で働きかけてゆく必要性を訴えていました。
(小田浩一)


2.シンポジウム

 皆さん、はじめまして。私は仙台の眼科医で佐渡といいます。今年から「リハ協」の理事の一人としてお手伝いをさせていただくことになりました。微力ながらがんばりますのでよろしくお願いします。
 さて早速ですが、今年の合同会議全体が「リハ協」「ロービジョン学会」の双方とって画期的であったと感じられました。問題がなかったわけではないでしょう。でも、皆さんも少なくとも「マイナス面よりプラス面の方がずーっと多かった」と感じたことと思います。
 シンポジウムT「疾患別ロービジョンケア」では、網膜色素変性症、緑内障、糖尿病網膜症を取り上げました。個々の講演内容はもちろんすばらしかったのですが、そのことと同等以上に、眼科医だけでなく、患者さん本人や医師以上に支援の前面に立って活躍しているソーシャルワーカーや視能訓練士が一緒に発表し意見交換を行った意義は大きいと感じました。眼科医や視能訓練士が、患者さんや家族の本音の意見・気持ちを正確に受け取ることができる機会は、決して多くないと感じていましたが、シンポジウムに参加していた医療関係者には、特に心に響くものがあったと思います。
 シンポジウムU「理想のロービジョンケア体制を求めてpart2」は、分野間に潜んでいると思われるバリアを、一部だけでも目に見える形で取り除いて見ようと、ネクタイを外していただき、すべての質問、意見交換を「さん付け」で行いました。各シンポジストには、自己紹介代わりに現在の活動に熱心に取り組むようになったきっかけを話していただき、講演内容も「こんなにうまく行っています」という表面上の報告ではなく、「比較的うまく行っている部分もあるが、現在の問題点は・・・」という形でお願いしました。抄録よりも本番のほうが、現場の苦悩がにじみ出ていたように感じました。総じて多くの「連携」が順調に進んでいるわけではありませんが、問題点を明らかにし、整理し、ひとつひとつ解決していくことが、結果的に「連携」を深めていく近道であると、私はシンポジウム終了時に感じました。
 来年も「リハ協」と「ロービジョン学会」の合同会議です。今年の反省点を生かす形で、より良い意見交換の場になることと確信しています。来年皆さんとお会いできることを楽しみにしています。ありがとうございました。
(佐渡一成)


3.ワークショップ

 現在、視覚障害者の総合的なリハビリテーションを進めるために各地でさまざまな取り組みが行われていますが、医療、福祉、教育、行政などの各分野の連携が十分に取れているとは言いがたい状況です。そこで、連携をより促進するための取り組みの一つとして、各分野がリハビリテーションに関して実施した内容を一括して記載できる手帳を作成することを目指しました。
 試作品をつくるにあたり、<1>手帳は視覚障害者本人が所持し、必要に応じて専門機関などに提示する。<2>記載はそれぞれに関わった専門機関の担当者が行う。<3>記載事項の変更についても随時記載していくが、基本的にリハビリテーションの導入期(半年〜3年程度)にのみ使用する。といった前提を立て、手帳の形態、記載事項、個人情報の取り扱いなどについてプロジェクトメンバーで検討しながら、試作品を作成しました。
 その試作品を合同会議のワークショップで発表し、会場とその後のアンケートで広く意見を募ったところ、リハビリテーションの中心となる機関の記載がないことや、細かな個人情報が記載されるため本人が知られたくない情報が漏れることにならないか、また、個人情報の扱いに慎重になり、手帳の記載に協力しない機関もあるのではないかといった危惧、当事者である視覚障害者が使えるような文字サイズや媒体を活用することの必要性、専門機関ではなく視覚障害者自身の意思や権限を尊重する配慮、などの課題があげられました。しかし、このような「手帳」を作成するという取り組み自体には多くの賛同が得られ、改めて、各分野が連携してリハビリテーションを取り組むための手法を多くの人が望んでいることが感じられました。
 今後はこれらの意見を踏まえ、再度プロジェクトメンバーで内容を検討修正した手帳を作成し、来春に全国の関係機関に頒布することを予定しています。
(加藤千智)


4.指定講義

 第6回日本ロービジョン学会学術総会と第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会の合同会議においては、その会期である3日間に6題の指定講義が行われました。「連携」をテーマとした今回の会議は、医療・福祉・教育等の分野がコラボレートされたことにより、眼科医等の医療従事者、大学等における研究者、福祉施設職員、学校教員などが一堂に会した初めての会議となりました。そのため、この指定講義は、それぞれの分野における現状や課題等、有益な最新情報の交換の場となりました。以下が、実施された指定講義の演題と担当者および概要です。
(1)障害者支援の今後の方向(小田島明:国立伊東重度障害者センター)
 障害者福祉の概要や「支援費制度」から「障害者支援法(案)」へと推移する障害者福祉の概要や財政上の課題に基づく現実的な制度設計の見通しなどの紹介。
(2)ウェブアクセシビリティとスクリーンリーダー(石川准:静岡県立大学)
 次世代音声点字インターネットブラウザの設計コンセプトや開発の現状と開発経過の中で果たす視覚障害当事者の役割などに関する報告。
(3)両眼開放視野について(松本長太:近畿大学医学部眼科)
 視機能を把握する上での視野測定方法と結果の解釈、片眼視野・両眼開放視野の違い、両眼開放視野に対する考え方とその問題点などに関する報告。
(4)中途失明と点字指導(原田良實:視覚障害者リハビリテーション協会)
 近年の中途失明者に対する点字指導の意義や課題の紹介と今後の点字指導の在り方に関する問題提起。
(5)特別支援教育の展望と課題(雷坂浩之:筑波大学特別支援教育研究センター)
 特別支援教育体制の概要説明と盲学校等の教育機関と医療・福祉などの関連機関の今後の連携の在り方に関する課題の報告。
(6)視覚障害者に対するADL評価(松本憲二:西宮協立リハビリテーション病院他)
 視覚障害者を対象とした新しいADL評価評価法の有用性と評価法の問題点等の紹介。
(雷坂浩之)


5.口頭・ポスター発表

 今回はロービジョン学会との初の合同会議、そして3日間にわたって行われたこともあって、一般口演(従来の口頭発表)22題、ポスター発表51題と盛りだくさんな内容の大会となりました。また、内容的にも基礎研究と実践・事例報告がバランスよくあり、充実した内容となっていました。
 一般口演は、ロービジョンケア、症例/地域連携、職業・雇用/その他、移動・環境/パソコン、連携、基礎研究といった6つのテーマごとにまとめて発表がされたため、参加する側としても、聞きたいテーマが選びやすかったように思います。今回のテーマが「連携」ということもあり、全体の4割近くが医療と福祉の連携をテーマにしたものでした。  各地域において、医療機関でロービジョンケアを中心とした様々な実践がなされていること、これまでなかなかうまくいっていなかった医療と福祉の連携の重要性が認められ始めていることが示されました。特に福祉財政が厳しいこの時期に、仙台市で行政、医療、福祉が一体となって、新たに中途視覚障害者の地域生活を支えるための支援センターが作られていく経緯が示された発表は印象深いものでした。
 ポスター発表の内訳は、実践報告14題、歩行関係10題、ロービジョン関係8題、事例報告5題、パソコン関係5題、その他10題でした。内容的には、基礎研究的なものと実践・事例報告なものが半々でしたが、ともにテーマがかなり絞られ具体的であったため、明日からの実践にすぐに生かせるようなものが多かったように思います。  医療と福祉の良好な連携が築かれつつあることはもちろん歓迎されるべきことですが、それがその地域にいる実践者にかかっている現在、資源の乏しい視覚障害者のリハにおいては、地域間格差がますます広がっていくことも懸念されます。今回の発表を聞いて、サービス実践者として、現在提供しているサービスに満足せず、地域づくり、ネットワーク作りに励んでいかなければならないという思いを新たにしました。
(田中雅之)


6.福祉機器展示会

 合同会議に併設して今回も福祉機器等の展示会を開催しました。32社、2団体、39小間の出展となり、過去最大の小間数となりました。
 部屋内だけでは展示できず、廊下も使用したので、見学者数のカウントは正確にはできませんでしたが、おおよそ、1日目:360名、2日目:430名となりました。
 何社かの説明員に聞いたところ、合同会議であるにも関わらず、眼科医の見学者は少なく、その中では、若い女医や看護士・年配の男性医は見学されていたように感じたとの意見が多くありました。今後の課題でもあるのではないかと思われます。
(園 順一)


7.参加者から

 合同会議に参加して
  和田浩一−盲学校教師(全盲)−
今回、ロービジョン学会と合同の研究発表大会が初めて開催されました。9月17日から3日間、神戸国際会議場で「連携」をメインテーマとして、予想を超える多くの参加者が集い有意義な研究会だったと思います。医療、福祉、教育、労働などの各専門職種の方々、視覚障害を持つ当事者や家族、患者団体など多くの人たちが、それぞれの立場で視覚障害に関わる問題を解決するための研究発表や意見交換を本音で行うことができたと思います。連携とは、本音で話し合い、刺激し合う中で、よりよい問題解決手段が見つかるものと確信しました。
 眼科医が、自分の力で治せなかった患者と向き合い真剣に問題を解決しようとした取り組みの実践を聞いて、視覚障害当事者として大変うれしく思いました。このような眼の治療だけでなく人のケアができる眼科医が増えるように働きかけて、中途視覚障害者へのよりよいケアが広がるよう連携を深める必要性を強く感じました。
 会場内の移動はガイドボランティアの方々の誘導で、ポスター会場や展示会場でも丁寧に説明をしていただき、全盲の私も安心して移動でき、自由に各発表を聞くことができました。食事やトイレなどの移動もスムーズにできて助かりました。神戸アイライト協会のガイドボランティアの皆様に心より感謝申し上げます。

 合同会議に出席しての感想
  氏間和仁
 9月17日(土)から19日(月)までの3日間、神戸で第6回日本ロービジョン学会学術総会と第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会の合同会議が開催され、私は2日目から参加しました。今回は合同会議ということでどのような出会いがあるのか、例年以上の期待を胸にしていました。セッションとして特に期待していたのは特別講演のAries Arditi氏の「Reducing the impact of low vision around the world」、シンポジウムの「疾患別ロービジョンケア −網膜色素変性・緑内障・糖尿病網膜症−」、ワークショップの「視覚リハ手帳プロジェクト」の3つでした。Aries氏の特別講演ではロービジョンの定義について、理解のために、数量化のために、法制度のためにという視点から整理することからはじまり、疫学的データ、サービスの現状などの現状分析、そして今後のアウトカム研究の必要性やThe Vision 2020 initiatieへの道筋について、国際的な視点で整然と講演された。通訳もスライドも分かりやすく、とても参考になりました。
 疾患別ロービジョンケアのシンポジウムはロービジョン学会との合同開催ならではの企画であると思いました。各疾患を医学的視点、当事者の視点から、パラメディカルの視点から系統的に聞くことができました。このようにそれぞれの分野の方のお話を一度に耳にすることができる機会は滅多にない貴重な時間でした。 視覚リハ手帳プロジェクトのワークショップでは、様々な分野から知恵を出し合って作られた手帳の紹介がありました。このようなツールが活用され当事者を核として医療、教育、福祉、労働等が連携して機能する時代がすぐそこまで来ていることが実感でき、私も当事者としてうれしくなりました。
 この合同会議に参加して、熱意ある医療関係者の方々のお話が聞けたことは私にとって励みになり、活力源になりました。毎年の合同会議になるとそれぞれの会の良さが失われかねないですが、隔年程度で合同会議を開き、今回のような刺激的な場が設けられるとうれしいと思いました。また、両方の会員である身としては「経済的に助かるかるなぁ。」とも思いました(冗談です)。
Aries氏が講演の最後に言っていた「至近距離でものを見る人が社会で特別視されないようにする。」という目標が達成される世も近いことを感じた会議でした。主催者のみなさまに感謝いたします。


8.まとめ

 「合同会議を終えて」
  中村透
 日本ロービジョン学会と視覚障害リハビリテーション協会の合同会議は700名をはるかに超える参加者を得て、成功裏に終わりました。
 私は当初”400名前後集まってくれれば・・・”と考え、”来ても500名だろう”と予想してもいました。蓋を開けてみれば先の数字になり、ハッキリ言って驚きました。
 何事も長く続けるとマンネリになり、新鮮味が失われます。リハ協会の大会も10数年続きややマンネリに陥り、障害者施策のグランドデザインが示される中、視覚障害リハそのものが後退局面に入る可能性が示唆されという社会状況も手伝って、”元気がないなあ”と日々感じていたのは私だけではなかったはずです。それが今回3日間という長丁場にもかかわらず700名を超えました。多くの関係者は、”新たな波”を望んでいたんだと思います。環境が厳しさを増す中でも”希望を見出したい”とあがいていることがわかったような気がします。
 3日間を通して最も印象深かったことは、新潟済生会の眼科医安藤先生の一言です。”こんなことをやったらこんな成果が挙がった、というばかりの発表はやめようよ”ということです。”やったけどうまくいかなかった。こんな工夫をしたけど通用しなかった、という話もしようよ”という提案です。ややもすると”発表”は、”成功した、うまくいった、こんなすばらしい成果をあげた”ということになりがちです。なかなかうまく行かない場合に知恵を出し合う。そんな議論ができる場になれば、合同会議はもっとすばらしいものになるのではないか、と思いました。
 ”新たな試み”ということで合同会議は注目されました。参加者の多くの方から賛同の言葉もいただきました。お蔭様で日本ロービジョン学会からは”来年も再来年も一緒に開催しましょう”との言葉もいただきました。  この合同会議を更に意義深いものに発展させるためには、関係者の日々の実践が最も重要なのだろうと思います。合同会議終了後1年間をどう過ごすか、何に取り組むか、個々人の姿勢如何にかかっているのだろうと思います。
 また、来年も東京での合同会議に参加していただければと思います。ありがとうございました。