演題:「眼をこれ以上悪くしないために」
講演者:田淵昭雄氏(川崎医科大学眼科学 川崎医療福祉大学感覚矯正学科 教授)
講演は視覚障害のなりたち、視覚障害の頻度を序論とし、恒久的な視覚障害に対する手立てをメインテーマに進められた。
視覚障害の成り立ちにおいては、「みる」には多くの意味があり、視経路にとどまらず、脳の様々な部位でその処理が行われていること、角膜・水晶体・網膜といった視器と疾患の関係についての基本的な説明と、網膜と深い関わりがあるという意味で、眼科領域においては脈絡膜がトピックになっているという話があった。視覚障害の頻度では、視覚障害原因疾患のワースト10があげられ、その上位5つの疾患について、それぞれの疾患の予防法の最近の動向についての説明がその後なされた。
網膜色素変性症においては、強い光や紫外線の有害性、ビタミンAとEの有効性についての実験結果など、緑内障においては、眼圧の日内変動や視野など日々の眼の状態の管理の重要性など、黄斑変性については有効な治療と手術の説明、光や活性酸素の有害性など、糖尿病については、早期発見・早期治療と生活習慣の改善の重要性と眼科的治療法など、強度近視については特に近視性眼底病変がとりあげられ、光の有害性・生活上の注意点などの説明があった。
疾患に関する情報というのは視覚障害当事者にとっては最も興味のあるトピックであろうし、視覚障害者に関わる立場の人間にとっても基本的な知識として持っていることが求められるものである。今回の講演のように、基本的な内容から最近の動向まで幅広く眼疾患についての話が聞ける機会というのはなかなかなく、眼疾患とその治療・予防について総括的に理解するのに非常に役に立った。アンケートの結果でも、講演については非常に有益であったという感想が多く、来年度のロービジョン学会との共催にむけての気運を高めたという点においても非常に有意義であった。
ワークショップ1:「視覚障害児・者の美術教育について」
Earth color代表 日野あすか
アースカラーは昨年度、視覚障害リハビリテーション協会の調査研究事業助成金を受け、「日本の盲学校・弱視学級の美術(造形)教育の実態調査」の研究を行った。今回ワークショップでは、その結果報告と調査から分かった今後期待される美術教育として挙げられていた、鑑賞教育とコンピューターグラフィックについて、ワークショップ参加のみなさんと意見交換を行う形で行った。参加者は30人弱で、自己紹介を兼ねて1人ずつ、今回のテーマについて思う事や参加した理由などを発言してもらい、それらの内容によって、参加していた盲学校の美術教員に答えていただいた。盲学校の中には、美術の授業も地域との関わりを持ち、陶芸の授業では、大学生が生徒1人に1人つき、ロクロで指導していたり、重複障害の生徒が多くなっているため、1人1人、その子どもに会った課題を用意されている事や、実際、弱視の生徒などには、お絵かきソフトやペンタブレットを使ったコンピューターグラフィックの授業が少しずつ行われている様子をお聞かせいただいた。また、参加者の中には、鑑賞グループや生活訓練などで造形活動をされているところもあり、鑑賞の仕方も一通りの解説ではなく、ガイドの主観から話を広げていく方が、わかりやすく楽しいという話もでてきた。「美術」という枠組みではなく日常生活の中1部として、たくさんの方に関わっていってもらえるよう、今後もこれらの活動を進めていきたいと思う。
ワークショップ2:「盲ろう者の手引き歩行について」
日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター 鶴見 朝子
長崎県身体障害者更生指導所 永井和子
鹿児島県視聴覚障害者情報センター良久 万里子
大阪市身体障害者団体協議会 不動澄江
高知県身体障害者連合会 別府あかね
3年間にわたって盲ろう者についてのワークショップが行われてきた。お互いが安全で楽に移動ができるように、リハビリテーション指導員が関わりを持つことの必要性があると考え、今回「盲ろう者の手引きについて」をテーマで話し合われた。
まず発表者から基本的合図を決めていきたいという考えが述べられ、デモンストレーションが行われた。それに対してフロアから、そもそも基本的な手引きとは何か、より分かりやすいサインとはどのようなものかについて、様々な角度から、多くの意見が出された。
盲ろう者の手引き方法の確立についての話し合いは、まだまだ始まったばかりで、これからもっと議論を深めて行かなければならないだろう。どんな時にこわいと感じるのかなど盲ろう者自身の意見も聞きながら、各地で取り組みの場を増やしていくことが望ましいと思われた。
ワークショップ3:「歩行訓練・指導のためのシミュレーション活用」
国立身体障害者リハビリテーションセンター学院 小林章
東京都盲人福祉協会 道面由利香
ポスター発表20「ロービジョンシミュレーションによる訓練・指導のポイントの検討(1)特にO&Mについて」のシミュレーション体験を行った。
会場を完全暗室にする作業が全日行われ、どんなグループワークとなるか、わくわくしてのぞんだ。
まず、透光体混濁0.04(ゴーグルにフィルターを付けて2mで0.1の視標を認知)に設定したシミュレーション体験キットと、強度近視0.02(プラスレンズをテストフレームに付けて1mで0.01の視標を認知)に設定したシミュレーション体験キットを準備した。そして、明るさ(十分な明るさ、暗い時、いろいろな懐中電灯)を変えて、白線、銀色のライン、銀色の階段、点字ブロックの黄色を視認した。視機能、明るさ、見る物によって見え方が変化することを実感できた。歩行指導をするときは、条件を変えて指導する大切さを感じた。参加者はキット作成・体験者が20名、それを借りての体験者が20名弱であった。
研究発表大会と併行して、会員および一般来場者に対して最新の機器の情報提供を目的とした福祉機器展示会を開催した。出展企業数は34社。新製品もいくつか展示され、来場者の関心を呼んだ。ただ、20日ほど前に千葉市内で同様の展示会が開催されたために一般の来場者数は少なかった。来場者は12日402名、13日は179名であった。
アンケートに対し55名(墨字50名、点字6名)の方から回答をいただいた。各内容についての結果は図1,2に示す。大会全体、口頭発表、ポスター発表についてはおおよそ同じような結果で、大変よかったという評価は少なかったものの、6割以上の方から大変よかった・よかったという評価をいただき、概ね好評であったと思われる。ワークショップでは、歩行訓練・指導のためのシミュレーション活用が参加者の評価が最も高かった。今年度のワークショップは時間を長めにとった。そのため、毎回自由回答の中で書かれる時間が足りなかったというコメントが今回は出ず、十分議論する時間がとれたものと思われる。機器展示については、自由回答の中でも、参加企業が例年より多く新しい商品も多かった、会場が広くてよかったなどのコメントが目立ち、評価は高かったようだ。その他、自由回答の中で、口頭発表の準備に時間がかかりすぎたこと、口頭発表のひとつの中止を当日に報告したこと、総会と次の口頭発表の区切れ目がはっきりしなかったことなどについてご指摘を受けた。これらについては今後の大会の反省材料にしていきたい。
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