2003年7月
第12回視覚障害リハビリテーション研究発表大会速報!
去る6月14日(土)・15日(日)の2日間、神戸ポートアイランドの「神戸国際会議場」において「第12回視覚障害リハビリテーション研究発表大会」が、「福祉機器展示会」と併せて開催されました。「研究発表大会」の参加者は249名、「福祉機器展示会」来訪者は延べ684名でした。
今年は両日にわたり口頭発表16題、ポスター発表28題、そして6つのワークショップが催されました。14日の午後には「第12回視覚障害リハビリテーション協会総会」が行われ、各報告・計画と決算・予算が承認されております。また、協会活動に関する建設的な意見が交わされました。14日夜の懇親会には約80名が参加され、会員間の熱心な議論や親睦が各テーブルで見られました。
なお、「口頭発表」と「ポスター発表」については「第12回視覚障害リハビリテーション研究発表大会論文集」を、「第12回視覚障害リハビリテーション協会総会」・各ワークショップ・「福祉機器展示会」については、下記の報告をそれぞれ御参照下さい。
T 定期総会報告
第12回視覚障害リハビリテーション協会総会は次のような内容で進行しました。
日時:2003年6月14日 13:30〜14:20
場所:神戸国際会議場3階国際会議室
1 会長挨拶および役員紹介
まず原田良實会長より、「会員の会費納入率が低い上、会員にならずに研究発表大会に参加する人が増加している。視覚障害者にとってなくてはならない会として、会員皆で力を出し合いながらやっていきたい」という内容の挨拶があった。また、今年度より新しい役員体制となったため、役員全員が自己紹介を行った。
2 議長および議事録署名人の選出
議事に先立ち議長の選出が行われ、参加正会員の中から加藤俊和氏が選出された。また、議事録署名人として同様に、今村直子氏、内田まり子氏が選出された。
3 総会成立の確認
総会出席者68名、委任状提出者118名で委任状を含めた総出席者数が合計186名となり過半数160名(昨年度会費納入者319名)を超えるため、規約第10条により総会が成立していることが確認された。
4 議案
第1号議案(2002年度事業報告)
資料に基づき説明がなされた。
第2号議案(2002年度決算報告)並びに会計監査報告
資料に基づき説明がなされた。
質疑を受ける時間を設けたが、出席者から質問は出なかった。
第3号議案(2003年度事業計画案)
資料に基づき説明がなされた。
第4号議案(2003年度予算案)
資料に基づき説明がなされた。
5 質疑
以下のような質疑応答があった。
Q:協会からの文書について、インターネットの利用を希望したにも関わらず、インターネットの他に点字、フロッピーが送られてきたが、無駄ではないだろうか。
Q:いくつもの媒体があるのは、その必要性があるからであって、複数の媒体は大切にすべきではないだろうか。
A:いくつもの媒体は会員からの要望によるものであるが、希望したにも関わらず他の媒体のものが届いているというのは、名簿管理上のミスと思われるので至急修正したい。
Q:これは質問というより要望だが、リハ協の求心力が弱まっているように感じられる。繰り返しベーシックな研修に取り組んで欲しい。
A:今年度事業計画の中にも研修事業の実施を挙げているが、一方的に研修会を企画するのではなく、会員一人一人がリハ協として何をすべきなのか、どのような方法で何が必要なのか考えていくことが重要だと考えている。
これらの質疑の後、第1号、第2号、第3号、第4号議案について、拍手により承認された。
6 議長解任
議長解任後、会長より閉会の挨拶と共に、来年度研究発表大会の開催日時および場所が報告され、今年度定期総会が終了した。
(久保 ますみ)
U ワークショップ報告
グループ1
「盲ろう者のリハビリテーション −歩行訓練について考える−」
鹿児島県視聴覚障害者情報センター 良久 万里子
長崎県身体障害者更生指導所 永井 和子
高知県身体障害者連合会 別府 あかね
日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター 鶴見 朝子
大阪市身体障害者団体協議会 不動 澄江
このワークショップは、「多くの視覚障害リハ担当者に盲ろう者に対して関心を持ってもらい、盲ろう者の生活の質を向上させるためのリハとはどういうものか、またリハ担当者は何をしなければならないか皆で考えたい」と思い提案させてもらいました。
まず、盲ろう者のリハへの取り組みについて
・通訳を介しての訓練の場合、通訳者が訓練のことを分かっていないと指導者側の意向が盲ろう者に伝わりにくい。また、通訳者が手を貸し、うまく進められないことがある。盲ろう者のリハを実施する際、リハのことを通訳者にも知ってもらい、リハ担当者も通訳のことを知り、お互いに理解することが大切である。
・援助依頼の際に「私は目と耳が不自由です。お話は手にカタカナで書いて下さい」というようなカードを使用している。
・盲ろう者に対しての訓練だけでなく周囲の人(介助者や家族、教師等)にも手引きの指導をしたり、盲ろう者の通訳・ガイドの養成講習会を開催したりしている。
・関係機関との連携、関わりを持ちながら盲ろう者のリハに取り組んでいる。
など各地から現状・課題の報告がありました。
フロアーから関係機関との関わりはどのようにしているか、盲ろう者の状態(盲ベース・ろうベース・高齢者の割合)、訓練の到達点をどこに置くのか等の質問の他、盲ろう者のリハに関わる際、聴覚障害のことも勉強する必要があるというご指摘もありました。
ワークショップには55名の方が参加され、盲ろう者のリハに対しての関心の高さがうかがえました。
(良久 万里子)
グループ2
視覚障害教育が大きく変わる?−特殊教育から特別支援教育へ−
岐阜大学 池谷 尚剛
国立特殊教育総合研究所 新井 千賀子
ワークショップ主催者の池谷氏、新井氏から"特別支援教育"の仕組みの一通りの説明があった。かいつまんで言うと社会福祉基礎構造改革と同様、教育制度の基礎構造改革が現在進行中であること、教育制度の中で盲学校や養護学校を含めた特殊教育を行う学校が"特別支援学校"というように名を変更すること、何よりも大きいことは、地域の普通学校に"特別支援を必要とする子供の入学を認めること"であると理解した。現存の盲学校などは"センター化"し、地域の普通校には"特別支援教育担当"の人員を配置し、専門家であるセンターの教員は巡回指導などに回る。統合教育を認め、巡回指導を行うというスタイルは既に欧米諸国では一般的であると認識しているが、そこではたと考えた。この制度改革で誰が利益を得るのだろう?地方分権一括法が成立し、文部科学省や厚生労働省の地方に対する指導力は一般的には低下している(というより、指示する立場になくなったと言うべきか?)。ワークショップで示された絵は、それなりに理屈が通っているようにも見える。しかし一方で非常に不安を覚えたのは私だけではないように思われた。
各都道府県の教育関係者は視覚障害児ということについてどれほどの知識を集積しているのだろうか? 日本国内にある教育関係の大学で、どれほど視覚障害児教育に関して情を発信しているのだろうか?視覚障害児自体が極端に減少している中で、教育実践が関係者の間でどれだけ共有化されているのだろうか?こういった情報や資源はいったい誰が、どのように蓄積していく責任を負うのだろうか?そもそも一人の子供に対して一貫した情報を誰が提供するのか?新井氏の口から"個々のケースに対し、情報を持っているのは最終的に親である"との説明が印象に残った。他の障害を持っている親のグループと比較すると視覚障害児の親のグループネットワークは非常に弱いと言われている。"親"は子供にとってどこで良い教育が受けられるのかという情報選択できるだけの材料をどうやって入手するのか?
"地域間格差と誰がいるかによっての差がこれからどんどん広がっていく"という漠然とした不安だけが残るワークショップであった。さて、リハ協会は何をすべきか。
(中村 透)
グループ3
「どうして訓練?いきる力を引き出すエンパワメントアプローチについて」
日本ライトハウスジョイフルセンター 武田 泰彦
日本ライトハウスジョイフルセンター 服部 純子
日本ライトハウスジョイフルセンター 徳大寺 華子
会場に入り、先ず予め参加者に配付された封筒の中に入っていたうさぎなどの図形により、同じ属性の図形を持っている参加者を探して班をつくりました。その後、発表者からケース事例の紹介があり、ケースの求めているニーズを班別に話し合う時間が与えられました。各班の代表が順に討議してだされたニーズを発表をしていきましたが、それぞれにだされたニーズが、ケースワーカ当事者の主観にとらわれている可能性、危険性についての指摘がなされ、生活モデルの視点から潜在化しているニーズのほりおこしと、それを当事者自身も整理、発見していけるワーカーの関わり方のプロセスの重要性が発表者より説かれました。
ケースワークする者のそれまでの人生経験や専門性が、ケースの潜在化したニーズの掘り起こしのために有効であるためには、「生活モデル」でとらえる旨発表者は強調していましたが、それはつまるところ己の主観で業務に携わることの限度限界について言及されているのだと思います。しかしながら、「己の主観でケースをとらえていない」と断言できるケースワークに携わる専門家がいるとすれば、実のところそれこそ最も主観層にあるのではないかと思います。むしろ、主観的にとらえてしまっていないのかという自問を常にできる者こそが「生活モデル」でとらえることの可能な専門家なのではないかと、そう思いました。
(前川 賢一)
グループ4
短期視覚障害リハビリテーションについて
日本盲導犬協会 中村 透
最初に、入所施設である国立神戸視力障害センターの原田氏、訪問訓練をしている島根ライトハウスの浅野氏、そして視覚障害当事者である京都福祉情報ネットワークの園氏、の3人からそれぞれリハビリについて問題点等の指摘があり、それを受けて中村氏が短期リハビリテーション訓練のねらいや方法を加えていくという方法で進められた。
現在の視覚障害リハビリテーションを考えると、数ヶ月単位での訓練となるため、長期にわたってなれない入寮生活を強いられるし、家や職場を空けることが困難な人には利用しにくい。また、訪問の訓練は自宅でも訓練を受けられる反面、時間的に余裕がなく特定の科目にしか対応できないし、視覚障害者同士の横のつながりといったものが構築されにくいという面がある。短期リハビリテーションは、これらの方法の中間的存在で、2週間程度の短い入所生活で、視覚障害リハビリテーションの基本的な部分を総合的に指導し、かつ当事者同士のつながりもできていくという部分をねらっている。
リハビリテーションというものを知らない視覚障害者に、リハビリに興味を持ってもらう「入り口」としては非常に効果的な方法ではないかと感じた。
後半には、一定期間、特定地域へ職員が数名出張して、その地域でこのような短期リハを行うといった「リハビリのデリバリーサービス」の話題も登場した。これも採算をとれるサービスとしてどう位置づけるかという問題がクリアされれば、非常におもしろい方法だと感じた。
部屋から人があふれんばかりの満員のワークショップであった。
(岡田 弥)
グループ5
テレビ機能付き携帯電話による視覚障害者の遠隔支援
(テレサポート)の研究(その後)
日本点字図書館評議員 長谷川 貞夫
筑波大学附属盲学校 雷坂 浩之
一昨年も同じ形態で開かれたワークショップは、約30名の参加者で始まりました。内容は以下の通りです。
テレビ機能付きの携帯電話を使用するにあたって、ユーザー側に求められること、サポート側に求められることの説明。会場にいるユーザーと東京にいるボランティアさんとのデモンストレーション(テレサポートNET代表の長谷川氏がカメラをあてた新聞をボランティアさんが説明する)、ワークショップ参加者のテレサポート体験(同じように東京のボランティアさんに新聞を読んでもらう)。ワークショップ会場から同じ階にあるエレベーターホールへ、サポーターを使ってユーザーが移動するデモンストレーション。
最後の質疑応答では、歩行場面でのサポート方法についてや、統合教育場面での活用について等の質問が出ました。歩行場面でのサポートの大原則は、@カメラを使いながらの移動は絶対に行わないこと、A周囲の状況を判断したい場合は、必ず静止した状態で確認を行うこと、などです。カメラからでは、距離感が把握しずらいため、この原則を守らなければ、事故につながる恐れがあります。統合教育等の場面での活用は、ユーザー側のカメラのスキヤニングの習得方法やどのような場面で活用できるのか等を検証し、マニュアルを考えていく必要があるなどの意見が出されていました。
どんな道具でも使い方を間違えば、怪我をしたり、期待した効果が上がらなかったりします。このテレビ機能付き携帯電話も、道具に使われることなく、電話の性能や効能を見極めつつ、安全に使用してこそ価値があると実感したワークショップでした。
(左振 恵子)
グループ6
視覚障害者移動支援設備の最近の動向と今後の課題
−視覚障害者誘導用ブロック,道路横断帯を中心に−
岡山県立大学 田内 雅規
鉄道総合技術研究所 鈴木 浩明
鉄道総合技術研究所 藤浪 浩平
成蹊大学 大倉 元宏
視覚障害者誘導用ブロック(以下、点字ブロックという)のJIS規格化の過程と結果(突起の断面形状はハーフドーム型、高さは5mm等)、ホーム上の点字ブロックの敷き方(ホームの端からの距離、柱等がある場合の敷き方等)、横断歩道に敷設された道路横断帯(通称エスコートゾーン)の有効性(歩行経験のある人の方がうまく利用できる)等についての報告が行われました。
普段、歩行訓練をしているときは、現状の環境に合わせてどうすれば安全かつ能率的に歩行できるかをまず考えますが、このワークショップに参加して、環境を変えていく必要性について改めて考えさせられました。
興味深い報告でしたが、時間が短く、質疑応答や意見交換の時間があまりとれなかったのが残念でした。
(鶴見 朝子)
V 福祉機器展示会報告
今年度も研究発表大会と併行して、会員および一般の来場者に対して最新の機器の情報提供を目的とした福祉機器展示会を開催しました。一般来場者向けには、各種メーリングリストやラジオ・新聞を通じて案内しました。
ただ、視覚障害者の参加は少なかったようですので、参加された会員の方はぜひ、近くの視覚障害者に、展示会で得られた情報の提供をお願い致します。
今回の出展企業数は27社でした。また、新商品もいくつかあり、大勢の関心を呼びました。2日間で延べ684名(14日:379名、15日:305名)の来場者を記録しました。
(園 順一)
W 研究発表大会に関するアンケート結果
今回の研究発表大会に関するアンケートに対して、45名(墨字41名、点字4名)の方から回答をいただきました。以下に集計結果の一部を報告します。
「全体」、「口頭発表」、「ポスター発表」、「グループワーク」、「福祉機器展」それぞれについて4段階での評価をしていただきましたが、すべてにおいて過半数の方から「大変よかった」、「よかった」という評価をいただきました(下図参照)。特に興味・関心のあるテーマを自分で選べたグループワークは「大変よかった」という意見が多く、好評だったようです。
また、自由回答として、多くのご意見をいただきました。以下にその一部を紹介します。
「議論の場などの機会・時間が不足していたと思う」、「大会当局からの文章や、ポスター発表等の掲示物の文字の大きさに視覚障害者への配慮が不足していた」、「ワークショップの時間が短すぎて話が深まらなかった」、「福祉機器展示に目新しい機器が少なかった」、「他分野との交流の場として、この協会の活動に期待しているし、今後も参加していきたい」、「視覚リハに関心のある人たちが「気軽に」参加できるようになった反面、発表テーマや内容も「軽く」なってしまったような印象」、「発表の内容等が経験の少ない人などへの配慮もある方が新しく加入することへの意欲も高まると思う」、「地域の視覚障害者がもっと参加するようPRの仕方を考えてはどうか」
これらのご意見に関しては、来年以降の大会運営にできうる限り反映させていきたいと考えています。
